静かな思い…

  

広島県広島市


 昨年のお盆休み、実家北海道でくつろいでいると一本の電話がかかってきた。
「4月に島根より、釈迦内柩唄の広島公演を観に行ったものですが…」あぁ…そういえば帰り際「島根には来る予定はないのですか?」と強く手を握って帰っていかれた方が…
 「難しいかと思うのですが出来たらいいなぁ…と思いまずは電話してみました。」うれしい電話であった。公演の事を知り、島根から三時間かけてわざわざ観に来てくれたこのYさんと「とにかく一度島根に行きます!」と再会を約束した。
 やわらかな笑顔の彼女は公演の時のパンフレットを大切にもっていてくれた。端が少しヨレヨレになっていたのは、感動を伝えるために何人もの人に、見せて歩いてくださっていたからだ。
 彼女の溢れる思い、いまだに残る差別の話を聞いた。部落差別で結婚が壊れてしまい日本の男性とは一生結婚出来ないと希望を失った女性の話。子供の頃よりずっといじめにあっていた20才の女性が市民ミュージカル参加を通じて明るくなり変わっていく事ができた話。
 Yさん自身も学生時代先生に「クラスにみんなと違う人間がいる。」という事を言われ誰の事を言ってるのだろう?と帰ってから母にその事を話すと「それはあんたの事だよ、だからあんたはまともに結婚は出来んよ」と言われた日の話。「自分はみんなとは違うんだ…」その日から彼女の人生は180度変わった。人に嫌われないように良い子でいなくては…いつも人の顔色をうかがうようになったと。淡々と話す彼女の頬にはずっと涙が流れていた。ジリジリと西日が差す中、気がつくと2時間外で立ったまま話し込んでいた。今の時代に…?悲しい事だが現実の話だった。
 雲南市公演は街中に大きく広がり大成功だった。みんなの顔が輝いていた。市民ミュージカルに参加している20才の彼女は同世代の劇団のメンバーともすっかり仲良くなった。この「つうしん」の事でYさんと久しぶりに連絡を取った時にメールをいただいた。

 「思えば一年たったのですね、、ご無沙汰しています。本当にやればできるのだと感じた嬉しい出会い日々でした、私達もどこかで役に立ったのだと幸せを感じました。 皆さん一人一人の捨てがたい!持ち味が好きです。皆さんに出会え自分自身が豊かになれた事一番嬉しいです。 皆さんがどこでお仕事されようとも、気持の上でずうっと応援し続けたいです。」
 
 うれしかった…島根の地でもっともっと上演したい。自分自身、舞台に立ちながら今の時代の空気を一緒に吸い悩み考え、豊かに生きていく事が出来たらと思う。

 記・荻原 ゆかり(2007.08.28発行 通信NO.42より)