「我ら前期高齢者!青春真っ只中」


静岡市清水区


 12月6日、火鉢型のストーブを囲んで前期高齢者?五人の男達がお汁粉に舌づつみをうっていた。
 清水の地元音楽隊「クリープ」(美しい声の女性ボーカル、薄井さんがいるが)の稲葉さん、宮城島さん、新聞配達員で「コスモスの唄」の作詞、作曲家の中山さん、昔演劇の鑑賞会に入っていた、渡辺さん、久保田さん、みんな清水公演を成立させた立役者達だ。しかし五人とも優しいと言うのか気が弱いと言うのか、人に物を売りつけたり、お願いしたりすることが特別に苦手な五人衆なのだ。公演当日、観客が秋田弁になじめるように、前座で「クリープ」の演奏をした。秋田出身の薄井さんの司会で「山ん婆」、「コスモスの唄」の二曲を披露した。その時のビデオを見ながら自分たちの姿に「俺たちもこれからバンダナを巻こうか」と稲葉さん、「イヤ、ありのままの姿が渋くていいのよ」と言う人。再び三たび熱いものがこみ上げ大声で笑い合っている。
 昔の教師仲間たちに手紙を書いて返事をくれた人達にコツコツとチケットをお願いした渡辺さん、「切符を買ってくれた人達から電話がかかってくるんだよ、いいもの観せてくれてありがとうって。楽しかったし、ホントに感動したよって。そんな電話を受けてたら、アー俺たちも感動を創った一員なのかなって気がして嬉しくってサ」と目頭を赤くしている。
 スキンヘッドで大きな体の稲葉さん、一〇〇枚を目標に昔の職場である農協などをこまめに歩いた。「チケットを売ってくれた地域自治会の天野さんから「ほんとに感動しちゃった、ありがとうって電話の向こうで声つまらせてるんだよ、だもんでオレも胸詰まってさ、お互い電話の向こうとこっちで泣いてたさ」と鼻水すすりあげている。
 ひときわ大きな声の久保田さん、どちらかと言えば小柄でやせ形、眼鏡を鼻先に少しずらし、隣にいる人と話す時でもビックリした様な眼で、エネルギーいっぱいの大声で話をする。劇中お客さんが何度も拍手するのを見ていて「アレー!お客さんがみんな主人公の藤子になっちゃった!と思ったよ!」と口角泡を飛ばしてはなしている。カーテンコールで花束を渡す係になってしまった彼は、奥さんからそのタイミングについてアドバイスを受けていた、「主役の俳優より早く舞台中央に到着してもダメ、遅すぎてもダメだめ、主役の藤子が登場しておじぎして頭を上げた時に貴方がそこに到着するようにしないとダメって言うんだよ、そんな難しい事、オレ出来ねえ、思っただけで頭の中が真っ白になっちゃうから、本番では主役の藤子さんだけ見つめて突進したんだヨ」。みんなも「久保田さんが舞台の階段にツッかかって転ぶんじゃないかとハラハラしたよ。」とまたまた大笑い。
 いつもニコニコ静かなクリープのリーダー宮城島さんは「プロの芝居を見に来るお客さんは前座に俺たち素人の歌なんか聞きたくないんじゃないか」と心配していたけれど、演奏するその姿は貫禄充分の魅力があった。切符売りなど最も苦手で一番の恥ずかしがり屋の普段の彼の姿からは想像できないものだった。
 世間の人とは昼と夜とを逆に生きている新聞配達の中山さんはギター片手に時間を縫う様にして自作の「コスモスの唄」のライブステージを都合20回実現させ約束通り50人の人を誘った、当日は「おじいちゃんの舞台だ」とお孫さん達がかぶりつきに並んでいた。

 記・由井 數(2009.01.01発行 通信NO.45より)