釈迦内柩唄
花は死んだ人の顔だでぁ
一九四五年六月、秋田県大館の花岡鉱山で強制就労させられていた中国人労働者の集団脱出がありました。結果、九八六人の中国人労働者に大弾圧が加えられ、四二〇人が殺害されたと言われています。
また、水上氏の父は、棺を作り、穴を掘って八十五才まで生きました。
これらの事実をモチーフにして水上氏が戯曲として書き上げた作品です。
登場人物の弥太郎には水上氏の父が投影されていますが、たね子も、ふじ子も、さくらも、うめ子も、花岡の火葬場もすべて空想のものです。
人権思想のひろがりは二〇世紀から二一世紀に引き継がれました。しかし世界の各地で戦争、武力による抑圧は終わらず、その犠牲者は後を断ちません。
私たちのこの日本でも、科学技術の飛躍的な発達、繁栄の陰で格差が拡がり、人間性の退化、弱い者が一層生きにくい世の中になってきているのが、今の時代の特徴に思えます。
水上勉作「釈迦内柩唄」は死体焼き場を家業とする家族の生きる姿を描きながら
人のやさしさ
命の平等と尊厳
生への渇望
を舞台を通して描きます。
人の死をめぐる中から見えてくる生命の尊さ、美しさを日本中の町や村を廻りながら、人と人との出会いの中に築きあって行きたいと願っています。